ameles

やぁ、こんにちは。 僕はネス。
あだ名なんだけどね。 僕、名前が無いんだよ。
ネームレス、略してネスだって。適当すぎて笑っちゃうよね。
ネス、ってあだ名を名前にすればいいって?
えぇとね、ちょっとややこしいんだけどね。
名無しって、ただ単に名前がついていないって事じゃないんだよ。
僕という存在を、示す言葉がないのさ。
幻に似てるけど、ある場合において、僕は幻にならない。
幽霊のようだけど、僕は肉体を持つ事も出来るし。
魔物? 天使? 悪魔? 妖精?
どれもイマイチしっくり来ないんだよねぇ。
僕、これで結構長生きなんだけどね、僕の姿が見えるのって限られてるんだよね。
現実と空想の境がはっきりしてない人とかは、見えやすいみたい。
あと、死期が近い人とか。
あとは、まぁ、もう死んでる幽霊さんとか。
そもそも人間じゃない、それこそ魔物とかね。人間は、僕らのような「名無し」を記憶に留めることができないんだ。
何故かとか言われても、僕には解らないや。
たまに、僕が見えて、話をする人間がいるけれども。
僕が見えなくなったその瞬間から、彼らは僕を忘れる。
僕は、誰の記憶にも残らない。つまりはね、こうして君と話してる事も、君は忘れるわけさ。ちょっと寂しいかな。
僕はね。

知り合いの妖怪がいいものをくれてさ。
記憶を食べる、本の形をした魔物なんだけど。
忘れる記憶をこれに食べさせておけば、いつでも閲覧可能ってワケ。マリアと待ち合わせてたんだけどね。
まだしばらくは来ないみたいでさ。
あ、マリアって僕の友達。
吸血鬼のお姉さん。
まぁ、暇つぶしに付き合ってくれないか?

これから、この本が食べた物語を、いくつかしてあげよう。さぁ、そこに座って。
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